*2023年7月改訂(第3版)より
効能又は効果に関連する注意
*5. 効能又は効果に関連する注意
本剤の適用にあたっては、最新のガイドラインを参照し、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの診断が確定していることを確認すること。
用法及び用量
6. 用法及び用量
通常、成人には3週に1回パチシランとして0.3mg/kgを点滴静注する。体重が104kg以上の患者には3週に1回パチシランとして31.2mgを点滴静注する。いずれの場合にも、70分間以上(投与開始後15分間は約1mL/分、その後は約3mL/分)かけて投与すること。
重要な基本的注意
8. 重要な基本的注意
8.1
本剤投与によりInfusion reactionが発現する可能性がある。Infusion reactionは主に本剤投与中又は投与開始2時間以内に多く報告されている。それらの症状を軽減させるため、以下の前投薬を本剤投与のたびに、少なくとも投与60分前に投与すること。[11.副作用 1.1 参照]
- コルチコステロイド(デキサメタゾン10mg又は同等薬) (静脈内投与)
- アセトアミノフェン(500mg) (経口投与)
- H1拮抗薬(クロルフェニラミンマレイン酸塩5mg又は同等薬) (静脈内投与)
- H2拮抗薬(ファモチジン20mg又は同等薬) (静脈内投与)
8.2
Infusion reactionの症状が発現した場合には、本剤の投与速度を下げる、又は投与を中断し、適切な処置(副腎皮質ホルモン剤等の治療又は適切な対症療法、抗ヒスタミン剤、解熱鎮痛剤又は抗炎症剤等)を行うこと。症状が消失した後に、投与速度を下げて再投与すること。重度のInfusion reactionが発現した場合は本剤投与を中止すること。[11.副作用 1.1 参照]
8.3
本剤は、血清中トランスサイレチン(TTR)タンパク質を減少させることにより、血清中ビタミンAの減少を招くことから、ビタミンAを補給するように患者に指導すること。なお、1日推奨用量は約2500 IUであり、推奨用量を超えて補給しないこと。 [12.臨床検査結果に及ぼす影響 1 参照]また、ビタミンAの欠乏により、眼症状(例:夜盲)等が発現するおそれがあるため注意すること。
8.4
トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー患者は、心筋症等の心症状を伴うことが多い。本剤との因果関係は明らかではないが、心臓関連死等が報告されているので、本剤投与中は定期的に心機能検査(心電図、心エコー等)を行う等、患者の状態を十分に観察すること。また、本剤投与中に、完全房室ブロックを含む房室ブロックがあらわれた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。[11.副作用 1.2 参照]
8.5
本剤はフィルターろ過により液量が減少し、ろ過後の採取可能容量はパチシランナトリウム10.5mg(パチシランとして10mg)未満であるため、必要なバイアル本数を計算する際に注意すること。[14.適用上の注意 1.1 参照]
特定の背景を有する患者に関する注意
9. 特定の背景を有する患者に関する注意
9.4 生殖能を有する者
妊娠可能な女性に対しては、本剤の投与中及び投与中止後12週間は適切な避妊方法を行うよう指導すること。[9.特定の背景を有する患者に関する注意 5 参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましい(母体の血清中TTR又は血清中ビタミンAの低下が胎児に及ぼす影響は不明である。ウサギでは、母体毒性によると考えられる自然流産、胚・胎児の生存率の低下、及び胎児の体重の減少が1mg/kg以上の用量で認められた)。[9.特定の背景を有する患者に関する注意 4 参照]
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
9.7 小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
患者の状態を観察しながら投与すること。一般的に生理機能が低下している。
副作用
11. 副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1 重大な副作用
11.1.1 Infusion reaction(27.0%):
関節痛又は疼痛(背部痛、頚部痛、又は筋骨格痛を含む)、潮紅(顔面紅斑又は皮膚熱感を含む)、悪心、腹痛、呼吸困難又は咳嗽、胸部不快感又は胸痛、頭痛、発疹、そう痒症、悪寒、浮動性めまい、疲労、心拍数の増加又は動悸、低血圧(失神を含む)、高血圧、顔面浮腫等があらわれることがある。[8.重要な基本的注意 1、2 参照]
11.1.2 房室ブロック(0.7%):
本剤投与中に、完全房室ブロックを含む房室ブロックがあらわれることがある。[8.重要な基本的注意 4 参照]
11.2 その他の副作用
臨床検査結果に及ぼす影響
12. 臨床検査結果に及ぼす影響
12.1
本剤の作用機序により、血清中のレチノール結合タンパク質及びビタミンAが減少する。ビタミンAを摂取しても血清中ビタミンA濃度は低下するが、代替機序によりビタミンAの輸送と組織への取り込みが生じうるので、血清中ビタミンAの検査結果を基にビタミンA摂取量を変更しないこと。[8.重要な基本的注意 3 参照]
12.2
本剤の作用機序により、血清中サイロキシンが減少することがある。
適用上の注意
14. 適用上の注意
14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1
無菌操作により、以下のとおり薬液を調製すること:[8.重要な基本的注意 5 参照]
- 本剤の採取可能容量はバイアル1本あたり4.4mL(8.8mg)である。用法及び用量に基づき本剤の必要バイアル数を冷蔵庫から取り出す。
- 変色がないか目視で確認する。変色がある場合は使用しないこと。なお、バイアルの内側表面に白色から帯黄白色の被膜が観察される場合があるが、製剤の品質に影響はない。
- バイアル1本の全量を滅菌シリンジに抜き取り、滅菌ポリエーテルスルホン(PES)シリンジフィルター(孔径0.2μm)を用いてろ過し、滅菌容器に入れる。バイアル毎に新しいフィルターを用い、この手順を繰り返す。
- 滅菌容器から、シリンジフィルターでろ過した本剤を抜き取り、総液量200mLとなるよう、0.9%塩化ナトリウム溶液入りの点滴バッグに本剤を入れ、静かに転倒混和する。
- 使用後の残液はすべて廃棄すること。希釈溶液は調製後速やかに使用すること。希釈後にやむを得ず保存する場合には、15~30℃で保存し、投与時間を含めて16時間以内に使用すること。
14.2 薬剤投与時の注意
14.2.1
インラインフィルター(孔径1.2μm、PES)を含む輸液セットと専用の点滴ラインを使用すること。なお、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)を含有しない点滴バッグを使用すること。
14.2.2
本剤は静脈内にのみ投与すること。また、投与中は注入部位を観察し、血管外漏出が疑われる場合には、投与を中止すること。
14.2.3
他の静注用薬剤等との配合又は同じ静注ラインでの同時注入は避けること。