オンパットロの特徴開発の経緯

 

トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーについて

トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーは、進行性で生命を脅かす、まれな常染色体顕性遺伝(優性遺伝)の全身性疾患です。トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーは150を超える様々なトランスサイレチン(TTR)遺伝子の変異に起因し、複数の組織に変異型および野生型TTRの両者からなるアミロイド線維の細胞外蓄積が生じることにより、主症状であるポリニューロパチーおよび心筋症が発現します。組織にTTRアミロイドが継続的に蓄積することにより、消耗性の病態に至り、未治療であれば、発症後約10年で死に至ります。

 

トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの治療

トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの治療には、主に神経学、消化器病学および心臓病学の専門領域にまたがる集学的な方法が求められます。これまでの治療選択肢としては、同所性肝移植(OLT)、TTR四量体安定化剤による薬物療法、疼痛や悪心、嘔吐、下痢など特定の症状に対する緩和療法/対症療法がありました。基本的に、OLTにより変異型TTRは血中から除去されますが、移植された肝臓によって引き続き産生される野生型TTRは影響を受けません。また、OLTが適応となるのは、若年発症(50歳未満)の患者で、特にTTR遺伝子の変異がV30M(30位のバリンがメチオニンに置換された変異)型で、移植までの罹患期間が短いことが適応条件とされることから、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー患者の約3分の2は移植に適していないとされています。したがって、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーを有する様々な患者において、本疾患の多様な症状に対応する安全かつ有効な治療に対して、高いアンメット・メディカル・ニーズが依然として存在します。

 

オンパットロについて

オンパットロの有効成分であるパチシランはTTR mRNAを特異的に標的とし、TTRタンパク質の発現を抑制する世界で初めてのsmall interfering RNA(siRNA)です。パチシランは、循環血中のTTRタンパク質の主な産生場所である肝臓の肝細胞への薬物送達を目的に脂質ナノ粒子(Lipid Nanoparticle:LNP)として製剤化されています。オンパットロは肝細胞において野生型および変異型TTRタンパク質の産生を抑制することにより、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーにおけるアミロイドの組織沈着を抑制します。

 

オンパットロの臨床効果

オンパットロは、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー患者を対象にした国際共同第Ⅲ相試験(APOLLO試験)などにおいて、複合的な神経障害スコアであるmNIS+7(補正神経障害スコア+7)スコアをはじめ、QOL(Norfolk QOL-DNスコア)、日常生活動作(R-ODSスコア)、栄養状態(mBMI)、歩行能力(10-MWT)および自律神経機能障害(COMPASS 31スコア)などを改善することが示されています。さらに、心臓の構造および機能に対しても良好な効果が確認されています。

 

国内外におけるオンパットロの承認状況

これらの臨床成績をもとに、米国では、画期的治療薬および希少疾病用医薬品の指定により、優先承認審査が行われ、2018年8月に「the polyneuropathy of hereditary transthyretin-mediated amyloidosis in adults」の適応症で世界初のsiRNA製剤として承認されました。また欧州でも、迅速審査方式(公衆衛生および治療イノベーションに関する主要関心事と判定された医薬品が対象)のもと審査が行われ、2018年8月に「hereditary transthyretin-mediated amyloidosis (hATTR amyloidosis) in adult patients with stage 1 or stage 2 polyneuropathy」の適応で承認されています。オンパットロの臨床効果は、日本人患者集団においても一貫して確認されたことから、日本では、2018年9月に承認申請を行い、2019年6月に「トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー」を適応症として製造販売承認を取得しました。