Expertsに学ぶ <座談会> 多科連携・病診連携によるATTRvアミロイドーシスの診断と治療 ~金沢大学における取り組み~

日時
2022年5月11日(水) 18:30~20:30
場所
金沢 東急ホテル
司会
  • 高村 雅之 先生
    高村 雅之 先生 金沢大学大学院医薬保健学総合研究科 循環器内科学 教授
  • 小野 賢二郎 先生
    小野 賢二郎 先生 金沢大学大学院医薬保健学総合研究科 脳神経内科学 教授
ディスカッサント(ご発言順)
  • 野崎 一朗 先生
    野崎 一朗 先生 金沢大学附属病院 脳神経内科 助教
  • 吉田 昌平 先生
    吉田 昌平 先生 金沢大学附属病院 循環器内科 助教
  • 渡邉 淳 先生
    渡邉 淳 先生 金沢大学附属病院 遺伝診療部 特任教授

トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー(以下、ATTRvアミロイドーシス)は、トランスサイレチン(TTR)遺伝子変異に起因する遺伝性の全身性疾患である。多彩な症状が様々な組み合わせであらわれるため、その診療には複数の診療科や施設間での連携が必要になる。また、近年複数の治療選択肢が登場したことから、患者の早期発見に加えて、その血縁者に対する発症前診断や遺伝カウンセリングの重要性も高まりつつある。

そこで本座談会では、ATTRvアミロイドーシスの診療を牽引されてきた金沢大学の医師にお集まりいただき、それぞれの立場から本疾患の診断と治療、そして血縁者への支援を含む多科連携や病診連携のあり方について議論していただいた。

「遺伝性ATTRアミロイドーシス」、「FAP(Familial Amyloid Polyneuropathy)」とも呼ばれています。
記載されている薬剤の使用にあたっては添付文書をご参照ください。

ATTRvアミロイドーシスの診断

小野本日は、多科連携、病診連携によるATTRvアミロイドーシスの診断と治療について、金沢大学による取り組みを中心に議論したいと思います。まずは野崎先生、石川県におけるATTRvアミロイドーシスの罹患状況について教えてください。

野崎2005年時点のデータによれば、日本におけるATTRvアミロイドーシスの罹患率は、多くの地域では100万人あたり0~1人であるのに対して、2大集積地である長野県と熊本県ではそれぞれ12.2人、10.1人、石川県ではこれに次ぐ4.2人で第3の集積地とされていま1)日本やポルトガル、スウェーデンで多いTTR遺伝子変異型はVal30Met(p.Val50Met)であることが知られており、それぞれの地域での臨床的特徴を比較してみると(1)発症年齢は日本の2大集積地(長野県、熊本県)やポルトガルでは30代と若年ですが、その他の非集積地や石川県ではより高齢で60代となっています。また、いずれの地域でも初発症状として感覚障害や自律神経障害がみられますが、自律神経障害は2大集積地では高度であるのに対して、非集積地では軽度、石川県では中等度であることが多く、石川県におけるATTRvアミロイドーシスは2大集積地と非集積地の中間の性質を持つと考えられます。

 

ATTRvアミロイドーシス[Val30Met(p.Val50Met)]の臨床的特徴の比較

表 ATTRvアミロイドーシス[Val30Met(p.Val50Met)]の臨床的特徴の比較

小野脳神経内科の立場から、ATTRvアミロイドーシスを診断するためには何が重要とお考えですか。

野崎ATTRvアミロイドーシスは、末梢神経障害や自律神経障害に加え、心血管症状、腎障害、消化管症状、眼症状、手根管症候群など多様な症状・病態を呈しま2)ATTRvアミロイドーシスを診断するためには、まず疑うことが重要であり、例えば、糖尿病のない方や化学療法を受けていない方で、慢性的に進行する軸索型感覚運動ニューロパチーや心不全を伴うニューロパチー、起立性低血圧などの自律神経症状、高齢男性の両側性手根管症候群などがある場合は、積極的に疑って大学病院などの専門施設にご紹介いただければと思います。

高村吉田先生、循環器内科の立場としてはいかがでしょうか。

吉田循環器内科では心臓にアミロイドが沈着する心アミロイドーシスを見逃さないことが重要です。心アミロイドーシスは、ATTRvアミロイドーシスのほか、野生型ATTR(ATTRwt)アミロイドーシスやAL(amyloid light-chain)アミロイドーシスなどでみられる病態です。ATTR心アミロイドーシスに典型的な所見としては、心電図では肢誘導の低電位や房室ブロック、偽梗塞パターンがあります。また、99mTcピロリン酸シンチグラフィでの集積像や心臓MRIでびまん性のガドリニウム遅延造影もみられます。さらに、最近の新しい画像検査においては、心エコーのspeckle tracking法によるbull's eye mapでapical sparingパターン(長軸方向ストレインが心基部よりも心尖部で保たれている所見)を呈すること、心臓MRIのT1 mappingでNative T1値およびECV値ともに高値を示すことも特徴的な所見として知られています。ATTR心アミロイドーシスは様々な心疾患に潜んでいるため、このようなモダリティを用いて積極的に鑑別をすることが大切です。

高村ATTR心アミロイドーシスは具体的にどのような心疾患に潜んでいますか。

吉田臨床でよく遭遇するのは心房細動(AF)と大動脈弁狭窄症(AS)です。例えば、経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)を受けた重症かつ高齢のAS患者を対象に99mTcピロリン酸シンチグラフィを用いてATTR心アミロイドーシス合併の有無を検討したところ、16%でATTR心アミロイドーシスを合併していたことが報告されていま3)

小野AFやASを合併している患者では、ATTR心アミロイドーシスの治療を行うことでAFやASの病態の改善が見込めるのでしょうか。

吉田様々な病態へのアミロイドーシスの追加治療が予後を改善するかということについては答えは出ていませんが、改善は見込めると思っています。例えばASに関しては、重症に見えても大動脈弁での圧較差が大きくならないlow-flow low-gradientのASでは心アミロイドーシスが主病態であるともいわれており、red-flagとされています。このような患者に対してATTR心アミロイドーシスも含めた治療を行うことで、総合的な予後を改善することができると考えています。

高村こうした心疾患において、心アミロイドーシス合併の有無を確認する場合、どのような点に注意されていますか。

 

図1 金沢大学附属病院における99mTcピロリン酸シンチグラフィの実施件数の推移

図1 金沢大学附属病院における99mTcピロリン酸シンチグラフィの実施件数の推移

吉田AFやASなど、その疾患だけでは説明ができないような壁肥厚や壁運動障害などの違和感があった場合は、心アミロイドーシスを疑って99mTcピロリン酸シンチグラフィを行うようにしています。99mTcピロリン酸シンチグラフィなどの骨シンチグラフィはATTR心アミロイドーシスの検出にきわめて有用であるこ4)また、海外ではモノクローナル蛋白の検索(血清免疫固定、尿免疫固定、血清FLC検査)と組み合わせれば、組織生検なしでATTR心アミロイドーシスを診断できるケースがあ注)ことが報告されていま5)実際に金沢大学では、心アミロイドーシスを疑った際に99mTcピロリン酸シンチグラフィを行うようにしており、2019年からは、AS患者に対するTAVI施行前に99mTcピロリン酸シンチグラフィを行って心アミロイドーシス合併の有無を確認していて、その実施件数は特に近年増加しています(図1)。

高村99mTcピロリン酸シンチグラフィに加えて、2022年2月からは99mTcヒドロキシメチレンジホスホン酸シンチグラフィも心アミロイドーシスの診断目的での使用が保険診療として扱われることになりました。こうした核医学検査の普及が期待されますね。

日本におけるATTRvアミロイドーシスの診断には、組織生検でアミロイド沈着を確認することが必須になっています。

ATTRvアミロイドーシスの治療とフォロー体制

紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、すべての症例が同様の結果を示すわけではありません。

小野近年、ATTRvアミロイドーシスに対して薬剤による複数の治療選択肢が登場し、本疾患を取り巻く診療環境は大きく変わってきました。それでは次に、本疾患の治療やフォロー体制について話を進めたいと思います。

野崎ATTRvアミロイドーシスに対して行われた最初の治療法は肝移植です。しかし、肝移植は、発症早期の50歳以下など限られた患者にしか適応がなく(条件は施設によって多少異なる)、高齢患者に対する治療法は長い間ありませんでした。そのような中、日本では2013年11月にTTR四量体安定化剤、2019年9月にsiRNA製剤であるオンパットロ(一般名:パチシランナトリウム)が登場したことで治療の選択肢が広がりました。

小野金沢大学では多くのATTRvアミロイドーシス患者を長年にわたり診療しています。脳神経内科でのATTRvアミロイドーシス患者のフォロー体制についてご紹介ください。

 

図2 金沢大学附属病院脳神経内科におけるATTRvアミロイドーシスのフォローアップ時の検査・評価項目

図2 金沢大学附属病院脳神経内科におけるATTRvアミロイドーシスのフォローアップ時の検査・評価項目

野崎当科では、半年から1年に1回の頻度で入院による血液・尿検査のほか、神経や心臓の検査、関連診療科の受診、また、栄養や神経、ADL、QOLに関する各種指標を用いた全身精査を行うようにしています(図2)。神経指標であるKumamoto score6)は感覚障害、自律神経障害、運動機能(筋力低下)、内臓(心臓、腎臓)機能障害を、MRC sumscoreは四肢の筋力低下を、CADTは自律神経障害を、NIS-LLは下肢の筋力と腱反射をそれぞれスコア化して評価します。

小野実際に治療中の症例をご提示いただけますか。

野崎60代男性の症例をご紹介します。初発症状は味覚異常で、その後、四肢のしびれ感や下痢・便秘などの自律神経症状もみられるようになりました(図3A)。そこで当科を受診され、アミロイドーシスを疑って生検や遺伝学的検査を行ったところVal30Met(p.Val50Met)変異のATTRvアミロイドーシスであることが判明しました。当時すでに使用可能であったTTR四量体安定化剤による治療を開始し、その後、オンパットロによる治療に変更して約1年半経過しました。治療効果については、治療開始後より、先ほどご紹介した、Kumamoto scoreやMRC sumscore、NIS-LLなどで評価しています。これまでの各指標の経過は図3Bに示したとおりです。

 

図3 ATTRvアミロイドーシスと診断した60代男性(自験例)

図3 ATTRvアミロイドーシスと診断した60代男性(自験例)

高村循環器内科におけるATTR心アミロイドーシス診療の状況をご紹介ください。

吉田当科では、ATTR心アミロイドーシスの初期評価として、心電図や心エコー、血液検査のほか、心臓MRI、骨シンチグラフィ、生検を含む心臓カテーテル検査を行いつつ、胃内視鏡検査や全身CT、関連診療科への対診などを含めて1週間程度で精査を行っています。その際、リハビリテーション部に依頼して、握力検査、6分間歩行試験、体重測定も実施しています。そして、紹介例が多いため、当科で診断した後は基本的に逆紹介して加療いただき、1年に1回、当科で定期的な検査を行うようにしています。

こうした診療体制の中、2019年1月から現在までに金沢大学に紹介された患者のうち35例をATTR心アミロイドーシスと診断しました。そのうち7例がATTRvアミロイドーシスであり、ATTRwtアミロイドーシスと比べて、年齢が低い(平均:65.29歳 vs. 79.61歳)、左室駆出率が保たれている(平均:62.17% vs. 47.54%)、ペースメーカ留置率が高い(57.1% vs. 3.6%)などの違いがありました。

遺伝性疾患に対する発症前診断と遺伝カウンセリング

小野次に、ATTRvアミロイドーシスについて、遺伝性疾患という側面から議論したいと思います。吉田先生、未発症者をフォローされている家系をご提示いただけますか。

吉田85歳女性を発端者としたATTRvアミロイドーシスの家系をご紹介します(図4)。発端者は75歳時より両下腿の冷感や足首以遠の感覚鈍麻などがあり、81歳時に完全房室ブロックに対してペースメーカ植え込み術を行いました。その後心不全で入院し、99mTcピロリン酸シンチグラフィの結果や家族歴からATTR心アミロイドーシスが疑われたため当科に紹介となりました。この発端者には、男児と女児、さらにその下の世代に孫が3人います。いずれも未発症で、外来で遺伝学的検査(発症前診断)を提案しましたが希望されず、今は年1回の定期検査でフォローしている状況です。このように、ATTRvアミロイドーシスでは家系内の未発症者に対するフォローが必要になることがATTRwtアミロイドーシスと大きく異なる点だと思います。

 

図4 ATTRvアミロイドーシスと診断した85歳女性の背景と家系(自験例)

図4 ATTRvアミロイドーシスと診断した85歳女性の背景と家系(自験例)

小野渡邉先生、臨床遺伝専門職としての立場から、ATTRvアミロイドーシスにおける遺伝学的検査に関する考えをお聞かせください。

渡邉遺伝学的検査は、すでに発症している有症状患者の「確定診断」を目的として行う場合と、発端者の同一家系内で病的変異を受け継ぐ可能性がある未発症者を見つけることを目的として行う「発症前診断」があります。確定診断のために行う遺伝学的検査は保険適用となり、その対象疾患は2006年(初収載)で3疾患であったのが、2022年では193疾患と増加し続けています。この中にはATTRvアミロイドーシスの原因遺伝子であるTTR遺伝子の変異を調べる遺伝学的検査も含まれます。

小野ATTRvアミロイドーシスの発症前診断はどの程度行われているのでしょうか。

渡邉ATTRvアミロイドーシスはTTR四量体安定化剤やオンパットロのような治療薬がある遺伝性疾患であることから、発症前診断で得られた情報は、発症リスクがある家系内の未発症者の健康管理をする上でとても重要です。全国遺伝子医療部門連絡会議が行った「成人発症の遺伝性神経・筋疾患の発症前診断に関する調査(2014年4月~2019年3月)」によれば、発症前診断を検討して来談したクライエントのうち、対象疾患は上位4疾患で82.6%を占め、ATTRvアミロイドーシスは3番目に多かったことが報告されていま7)また、ATTRvアミロイドーシスの発症前診断を検討して来談した年間クライエント数は2004年4月~2006年3月で0名であったのが、2014年4月~2019年3月では20余名と飛躍的に増加し、発症前診断の実施率も他の疾患より高く70%を超えていたことが示されています(図57-10)

 

図5 日本における発症前診断の実施状況

図5 日本における発症前診断の実施状況

小野金沢大学における発症前診断の手順をご紹介ください。

渡邉まず、遺伝診療外来で遺伝カウンセリングを複数回行うとともに、疾患関連診療科や精神科と連携して、遺伝診療カンファレンスで検査可能かどうかを検討します(図6)。そして、検査希望であった場合は臨床倫理委員会で検討した上で承認の後、遺伝学的検査を実施し、検査実施後は結果説明に続き、フォローアップを行っています。具体的なフォローアップとして、発症前診断で陽性となった場合は、未発症期に発症を早期に見つけるための定期的な検査や遺伝カウンセリングによる心理的な対応を行います。その際、診断後の早期治療につなげるために、発症前診断で陽性となった場合の対応について、関連診療科間で共通認識を持てるような方針を予め決めておくことが重要です。

 

図6 金沢大学附属病院における発症前診断の手順

図6 金沢大学附属病院における発症前診断の手順

野崎肝移植しか治療法がなかった時代と比べて、薬剤による治療が可能になった今では、ATTRvアミロイドーシスの早期診断・早期治療の重要性はさらに高まったといえます。できるだけ早い時期に遺伝カウンセリングを行って、発症前診断という選択肢があることを未発症者に提示することが大切です。私は、ATTRvアミロイドーシスの未発症者を外来でフォローしていた経験があります。そのときは、神経診察と心電図、心エコー、神経伝導検査などを半年に1回行っていて、その結果、その方の発症を早期に捉えることができました。

小野ATTRvアミロイドーシスにおいては、2大集積地である長野県と熊本県以外の地域でも未発症者のフォローをしっかり行っていくことが大切ということですね。

渡邉金沢大学附属病院では、2020年11月、遺伝性疾患の診療支援を目的に、遺伝診療部を中心とした遺伝医療支援センターを開設しました。ここでは、患者や血縁者の相談窓口だけでなく、院内での各診療科の主治医、看護部・検査部などの様々な診療部門などとの連携や、かかりつけ医あるいは院外機関との情報共有・連携なども行える体制を整えています。遺伝性疾患や遺伝学的検査に直面して不安や疑問に思うのは、患者や血縁者だけでなく医療者にも起こり得ることなので、こうした窓口があることを知っていただければと思います。

ATTRvアミロイドーシス診療における多科連携、病診連携の重要性

高村ATTRvアミロイドーシスを見逃さないためには、複数の診療科が連携することに加えて、かかりつけ医などの地域の医療機関から大学病院のような専門施設への紹介のハードルをいかに下げるか、また、本疾患に関する情報をいかに広めるかが課題だと思います。ATTRvアミロイドーシス患者を一人でも多く診断し治療介入するためにはどのようなことが重要と思われますか。

吉田2019年1月以降、当科に直接ご紹介いただいてATTR心アミロイドーシスと診断された患者は29例いましたが、そのうちATTR心アミロイドーシス疑いで紹介されたのは16例のみでした。近年、ATTR心アミロイドーシスの認知度は高まりつつありますが、まだ十分とはいえないのが現状です。当科でATTR心アミロイドーシスを診断した後は、患者を紹介元にお戻しするようにして、ATTR心アミロイドーシス疑いでご紹介いただけるような施設がより多くなるようにしていきたいと考えています。

心アミロイドーシスは心疾患をはじめ様々な疾患に隠れています。心肥大を見つけた際には、Kumamoto Criteria11)とされている高感度心筋トロポニンT≧0.0308ng/mL、左室壁厚≧13.6mm、Wide QRS(QRS≧120ms)をご確認いただきたいと思いますし、脳神経内科で末梢神経障害や自律神経障害を診たときは、心エコーも併せて行っていただきたいと思います。また、心アミロイドーシスでは手根管症候群や脊柱管狭窄症を主訴に紹介されるケースがあるので、整形外科との連携も重要と考えます。

野崎全身性疾患であるATTRvアミロイドーシスの診断・治療においては、複数の診療科と連携することが必要です。特に、非集積地におけるATTRvアミロイドーシス患者の主な死因は心不全や突然死であることか12)循環器内科との連携は必須といえます。

また、私の経験では、下痢・便秘を繰り返していて消化器内科で機能性胃腸症として治療を受けていた患者が、しびれ感を訴えるようになり、その後ATTRvアミロイドーシスと診断されたことがありました。他の臓器障害にニューロパチーを併発している場合は、ATTRvアミロイドーシスを疑っていただくことも重要と考えます。

小野ATTRvアミロイドーシスと臨床症状が似ているニューロパチーを伴う神経疾患として慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)があります。CIDPと診断されて治療を行っても抵抗性を示すような場合、実はATTRvアミロイドーシスであったというケースがありますね。

野崎はい。CIDPは免疫性のニューロパチーで、経静脈的免疫グロブリン(IVIg)などで治療が行われます。ATTRvアミロイドーシスの治療法とは全く異なるため、両者の鑑別は重要です。CIDPは、様々な原因を除外した上で最後に付ける診断名だと認識しています。ATTRvアミロイドーシスは診断法が確立されているので、適切なステップで診断を行いCIDPと鑑別することが大切です。

渡邉多科連携の枠の中に、遺伝学的検査や遺伝カウンセリングを行っている遺伝診療部も加えていただければと思います。医療者からは患者や血縁者に「遺伝」に関する相談窓口があるということを是非お伝えください。そして、医療者においても「遺伝」に対するハードルを上げることなく我々にご相談いただき、双方で情報共有できればと思います。

高村遺伝診療部も含めた垣根のない多科連携、病診連携が実現するとATTRvアミロイドーシスの診断率はさらに高まると思います。そして、大学病院で診断した後は、地域の医療機関と連携して診療にあたっていくことが大切ですね。

小野ATTRvアミロイドーシスは神経症状と心症状を中心とした全身性の遺伝性疾患であることから、脳神経内科や循環器内科を中心とした多科連携、そして遺伝診療部や地域の医療機関なども含めた包括的な医療体制を整えて診療にあたっていくことが重要と考えます。

本日はありがとうございました。

内容および医師の所属・肩書等は2022年8月記事作成当時のものです。

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